えおろーぐ

ナロスィー、お前、勝手にヒト、連れ出して。
なにしてるかと思えば、またヒトの道具、いじくり回して。
母王様、大変なのに、そんな暇、ない！

ヒト、我が愚弟、失礼した。
我、「オンドの母王」取次、ゼロスィー・オーンである。
一族を代表して、頼みたいこと、ある。

潮が引き、困ったこと、起きたのだ。
愛しき我らが母、すなわち「オンドの母王」様、
危機、瀕している。
母王様、身重だ。
通常なれば、この深海で、母王様、産卵する。
それで、オス、卵いただき、子育てする。
でも、潮引きし今、うまく産卵できない、かもしれない。
オンド、みな生き残るため、
母王様の卵、オス全員で分けるが、心配。

「光の氾濫」、オンドの故郷、壊滅させ、オンド減った。
母王様の産卵、うまくいかないと、
一族、また減ってしまう。

ゆえ、陸よく知るヒト、助力乞いたいと、
母王様自ら、ヒトとの対話、所望している。
「オンドの潮溜まり」まで、きてほしい。

ナロスィー、お前も、来い。
ヒトにも、母王様にも、迷惑かけるな。

ヒトのまれびと、ご足労、感謝する。
母王様、紹介しよう。

まれびと、我も、協力感謝する。
だが、母王様、まだ産気づく様子、ない。
ゆえ「ナロスィー・コール」と共に、待っていてほしい。

まれびと、我も、協力感謝する。
だが、母王様、まだ産気づく様子、ない。
ゆえ「ナロスィー・コール」と共に、待っていてほしい。
もしや、母王様へ、話しに来たか？
なら、取次しよう。

まれびと、ナロスィー・コールから、話聞いている。
我らが母王様へ、献上品、あるようだな？

ふむ、ムニリの肝、か。
これならば、身重な母王様にも、障りない。
我から、渡そう。

母王様の好物、おおよそ、ナロスィー・コールの、知恵であろう。
だが、好む食事だけでは、産卵の問題、根本的解決ならず。
無事産卵できるよう、引き続き、協力頼む。

「ナロスィー・コール」にも、
気を緩めることなきよう、伝えてくれ。

母王様、謁見するならば、取り次ぐぞ。
ただし、あまり長居、せぬようにな。

母王様、様子おかしい……！
ヒトのまれびとも、母王様の声、聞こえるか？

おお、ヒトのまれびと……！
どうだ、母王様救う、妙案あるか？

な、なるほど、この綱、
岩場括り付け、力込めるよすがにするのだな……！
わかった、すぐ母王様、渡そう。
この緊急事態、
海中漂う、ケルプさえ、すがりたいくらいだ。
かような強靭な綱、頼りにならない、わけがない。

扉の向こう、ほかのメスたちも、暮らしている。
彼女たち、綱吊るすよう、伝えておこう。
我らここで、見守るべし。

綱、渡してから、ずいぶん経った……。
母王様、ご無事だろうか……。

いらない、のか！？
良き卵、賜ること、この上ない、誉れなのだぞ……！？

ナロスィー、ヒトに関心あるお前、非難して、すまなかった。
ヒトと、お前の、おかげで、オンドの一族、
また命つなげられる。

なにより、お前、初めての卵、もらいうける。
これで立派な成人、オーン、名乗るがいい。
とても、めでたい、祝福しよう。