えおろーぐ

フッハハ……待っていたよ、夢で視たこの刻を！
我らの出会いは「森の意思」により計画されていたッ！

シッ……光の精に聞かれるとまずい、声を落とそう……。
実は最近、繰り返し夢にビジョンを送られてきていてね、
森の運命を左右しかねない、惨禍が起きるというんだ。
夢に現れ、僕に語りかける存在……
それは、伝承に語られし聖なる「大蛇」さ！

大蛇とは、かつてラケティカ大森林を中心に栄えた、
古代「ロンカ帝国」において、神獣として崇められていた存在だ。
そしてこの森のいずこかに、いまも眠り続けている……！！
正確な呼称は定かでなく、聖なる「ロンカの水蛇」、
「昏き森の守護者」、あるいは「破壊者」など……
時代により、66通りもの異名を与えられてきたらしい。

その伝説の「大蛇」が、毎晩のように夢に現れては、
ボクにビジョンを与え、何かを伝えようとしているんだ。

やはりこれは、森のすべての生命が秤に掛けられた危機ッ！
立ち向かうことこそ、ボクらの宿命…………ッ！！

ヴァラン！
ボクたちは、森の行く末について大切な話をしているんだが？

いつもそうやって、ボクのビジョンを否定する！
これは「大蛇」様に選ばれし神聖な力なんだぞ！？

良い機会だ、今日こそボクの夢が正しいと証明してみせよう！
ビジョンに現れし「大蛇」よ、我が眼前に顕現するのだーッ！！

………………フ、フハハ……！
ハーッハッハッハ！！！

ハハハ！！
やはり、あの夢のビジョンは真実だったのだ！

ついにボクは見つけた……
いいや、かの存在がボクを見つけたとも言えるだろう！
そう、夢を幾度となく啓示に訪れた、「ロンカの水蛇」が！！

ハーッハッハッ！！
ついに、森の意思はボクを選びたもうた！
災厄を避けるべく、幼きお姿の化身をお送りくださったのだーッ！

さぁ、ロンカの聖なる水蛇よ……我に運命を示せ！
災厄に見舞われんとする、この昏き森を救う力を……ッ！

ム……たしかに、魔物が徘徊するような場所で、
「水蛇の化身様」に危険が及んではいけないな。

だが、化身様に失礼があってはならないぞ、
集落まで地を這わせるなど、もってのほか！

またお前は、失敬な……！
ああ、しかしボクの両の手は、
「水蛇の化身様」を預かる重責に耐えられるだろうか……！

……適任者がいたね？
貴殿なら、道中で魔物や罪喰いに襲われても、
「水蛇の化身様」を守り抜けるだろう！

そのようなズタ袋に「水蛇の化身様」を！？
だから無礼であると……！

ム、致し方ない……！！
いいか、神にも比肩する存在の化身であられるのだ、
うやうやしく丁重に、天に掲げるようにお運びするんだぞ！

くれぐれも「水蛇の化身様」に失礼のないよう送り届けるんだぞ！
ボクも、すぐ後から追いかけよう。

「水蛇の化身様」なら、ずっとここにいらしたようだが……？
しっかり頼むぞ！

運搬、ご苦労だった！
おおぉ、聖なる「水蛇の化身様」を、
我が郷里にお迎えできるとは、なんたる光栄か……！

これぞ「昏き森の聖詩」は第31章5節に描かれた場面が、
現実に証しされたということ……つまり、9節に連なる…………

だから妄想じゃあないッ！
2年前だって、ボクが正しく聖詩を読み解けていたら……！

見ていたまえ、今度こそだ！
ボクはこの化身様と共に、森を滅びの宿命から救ってみせるッ！

待った。

聖なる「水蛇の化身様」は、すべてを語ろうとはなさらないが、
しかし御姿を現したことには、必ず意味があるはずだ。
先ほどから、その考察をしていたんだがね……。

見たまえ、化身様のこの体表の縞模様を！
森の地脈の流れを示しているように思えないだろうか、
いや、そうに違いない！
そして、この縞と縞の間にある傷は！
今まさに迫る、森の運命を揺るがす危機のことを、
我らに伝えるための啓示と捉えるべきではなかろうか！？

きっと皆、ヴァランのように、聞く耳を持たないだろう。
つまり、この災厄を救えるのは、もはやボクらふたりだけ！
しかしどうして、
旅人である貴殿の助力を乞うことができたものか……！
やはり莫大な報酬か、そうだろう！
縞模様が示すのは「ロツァトル大階段」の付近！
この場所こそ、災厄の鍵が眠る地脈の結節点に違いない！
貴殿には報酬と引き換えに、ここを調べてきてもらいたい！

ボクは化身様と共に、ここで待つとしよう。
災厄の元へと、自ら足を運べないのが口惜しい……！

さあ、化身様の示した地には何があったのかね！？

なにッ、これは……！！

どうだ、化身様のお導きを信じる気になったか！！

すなわち、森の危機だーーーッ！！！
ハッハッハハ、今度こそ間違いないな！

今こそ啓示の実りし時……ッ！
化身様、我らにこの災厄を乗り越える力を与えたまえ～！！

よし、スリザーバウとこの森の行く末は、
大いなる意思に選ばれし、我々の手に託されたッ！
「水蛇の化身様」が降臨せしは、
この危機を知らすために違いない！
さぁ、我らに次の道を指し示したまえーッ……！！

むぅ、そうはさせまいが……しかし、見るがいい！
「水蛇の化身様」の、横腹のここだ！

縞の間にあった傷は、不思議と癒えている……しかし！
となりの縞をたどった先だ、新たな傷が現れているぞ！

つまり地脈の流れに沿った場所、ダイヤーズウォッシュ付近で、
「常闇の愛し子」の連中が、新たに何か仕掛けたはずだ。
連中の企てを止めるのは、ボクらでなくてはならない！

「常闇の愛し子」一派を止めるのは、ボクらしかいないッ！
ダイヤーズウォッシュを調べに行ってきてくれたまえ！
貴殿に託し、ボクはここで祈りを捧げていよう！

「常闇の愛し子」の連中が現れた、だと……！？
森の危機の正体に迫っているというわけだな！

おお、ぶじ戻ったか……！
ボクと「水蛇の化身様」が共に唱えた、
「昏き森の聖詩」から引用した祈りが通じたのだな！

「常闇の愛し子」の奴らめ、こんな陰謀を企むとはッ！
地脈への破壊工作など、森の意思をかえりみぬ大それたことを！

森の守護者たる「ロンカの水蛇様」は、
清めるどころか、森を汚さんとする悪意を察知したのだな。
奴らめ、意思の声も聴きとれんくせに、嘆かわしい……。
そして我々こそが森を救う勇士にふさわしいと、
「化身様」を遣わしてくださったに違いない。
ああ、その重責と期待を、見事ボクらは果たせたのですね……。

無粋なことをするものではない！
きっと役目を終え、お隠れになったのだ……！

おお……！？
ついにヴァランが、ロンカの伝説に興味を持ったか！
よしよし、それではオレが解説してやろう！

化身様と出会った場所に、巨大なクリスタルがあったろう？
あれは「水蛇の宝卵」と呼ばれるものでな。
伝承によれば、ロンカ文明が栄えるより古い時代から……

……して、初期ロンカ文明の巨石文化との関連についてだ、
明かされぬ聖碑文をたどり、幻視の年代記が証明されれば……

コラ、まだ講義は終わってないぞーッ！！

クックク……

フッハハ……そうか、貴殿がボクにこの者たちを遣わせたのか！
素晴らしい、ちょうど先ほど「ロンカの水蛇様」より、
新たなるヴィジョンが示されたのだ！

次なる森の危機を示す夢に、この東の森を視たのだ！
青き花路、神殿群と共に現れしは、秘されし記憶の石板……
そして化身様の御姿と……我を導く対なるヴィースッ！

そうッ、森の危機だ！！
我が導き手よ、「ロンカの水蛇」の化身様の、
小さな蛇のような御姿に、この森で心当たりはないだろうか！？

ふむ、ボクがトゥシ・メキタ湖の畔で、
初めて化身様にお会いしたのも、なるほど水辺であった……
なればここでも、その川沿いにおわすに違いない！

この森にやはり……いまボクが参りましょう！
化身様、何処においでなのですか～～！！

化身様、よくぞご無事でっ……！！！

さぁ、いかなる森の危機が迫っているのですか！
我に次なる啓示を～！

ああっ、そのように地を這われては！
ボクがお運びしますのに～！

「夢見師」……！
ボクのこの選ばれし才は、そう呼ばれるのだな！！

おお、ロンカの神殿……！
ビジョンの光景が、すぐそこに！
ボクも、近くまでは同行できるだろうか！？

なんと偉大な神殿か！
時が経とうとも、これほどの威容を……！

おお、水蛇様についての英知がその石板に！！
早くファノヴの里に戻り、神意を解き明かそうぞ！

おお、なんたる叙事詩だ！
貴方がたが、今日まで守り継いでくれたのだな……！

え、あ、そのような……
古き護り手と共に森の守護を担えるなら、至上の誉れだが……！

……そうか、ビジョンに示されし森の危機とは、
ファノヴの里の衰退と共に、ロンカの叡智が失われゆくこと。
それを食い止め、助けとなるべく、ボクが遣わされたのか！
そして伝承に語られし、水蛇の声を聞く神官の一族！
ボクこそはその末裔であるかもしれないッ……！

再び、御姿を隠されたか……。
しかし此度は危機の啓示だけでなく、
友情の福音のため訪れてくださったのだな……！

ああ、ついにこの森は、
ロンカ皇帝が預けた形で護られていくことになろうぞ！
我ら、ラケティカの民によってだーーッ！！