えおろーぐ

まずいぜ……。
今日にかぎって、コイツがやられちまうとは……。

こらこら、ラタタ。
今回ばかりは、さすがのお前でも危なかったんだ！
こういうときは「ありがとうございやす」っていうんだぞ。

……お気を悪くしないでくだせぇ。
なにぶん、戦いに目がない無愛想な娘なもんで。
この度は、危ないところを、ありがとうございやした！

こいつはぁ、ぶったまげた！
ラタタが、人様の腕前をほめるなんて……。
空からイワシが降ってこなきゃいいが！
……なるほど、あなたはスウィグレールさんが寄こしてくれた、
お迎えの方でしたか！？
ええ、お探しの斧術士は、確かにラタタです。
俺たちゃ、高地ラノシアの「プアメイドミル」って集落……
おっと、今じゃ廃村って言ったほうが早いですかね。
そこの復興に挑んでる、海賊「猟犬同盟」の元一員なんですわ。
この娘……ラタタは、俺たちの中でも、
「狂犬」と呼ばれるほどの猛者でしてねぇ。
……もっとも、戦い以外には興味を持たなくて、
野良仕事は手伝おうともしてくれねぇんですが。
そもそも、この娘とまともに話せるヤツもいなくて……。
おっとっと、ラタタのやつ、ヘソまげちまったか。
それじゃ、俺たちゃスウィグレールさんとこに向かいます。

おお、先ほどはどうも。
ラタタを「紅燕陸戦隊」に勧誘してくれてんですが、
あの娘、ぜんぜん話を聞かなくって……。

……ラタタのヤツ、あなたのお誘いにも乗りませんでしたか。
あの娘の無愛想は、大目に見てやってくだせぇ。
ああなっちまったのは、俺らのせいなんです……。
ラタタは、猟犬同盟の船の上で生まれましてね。
直後に、両親が「シゴト」で死んじまったもんで、
俺ら荒くれ海賊が、総出で育てあげたんです。
玩具は斧、遊び場は砲列甲板……。
おかげで「狂犬」と呼ばれるほど強くなりましたが、
歳が近い子と関わることなく、ここまできちまいまして。
言葉が少ないラタタが心配で、
最近は、こうしてなるべく外へ連れ出してるんですが……
相も変わらず、興味を向けるのは戦いばかり……。
いっそ「紅燕陸戦隊」に入れば、
戦いに明け暮れられるし、荒くれの戦友もできて、
いいんじゃないかと思ってるんです……。
無理を承知で、お願いします……。
もう一度だけ、あなたから入隊を勧めてみちゃくれませんか？
「ラタタ」なら、ニーム浮遊遺跡で風に当たってるはずです。

……勧誘の件、どうなりましたかね？
ラタタのヤツ、戻ってきても、
うんともすんとも言わなくて……。
……ダメでしたか。
猟犬同盟の連中としか関わったことがないもんですから、
知らない人との集団生活が、いやなのかもしれませんね。
今回は、ラタタのためにありがとうございました！
「スウィグレール」さんにも、詫びを入れといてくだせぇ。
……では、俺らはプアメイドミルへ帰ります。