えおろーぐ

齢も100を超えると、数えるのがむなしくなってくるよ。
ご主人と育ったこの地を歩くのが、唯一の楽しみだったが、
最近は、腰を上げるのもしんどくてね。

あれま……ヒトがヒトの姿のままでここに来るなんて珍しい。
何かご用事かな、妖精に許されたキミ。

…………？

クゥゥ……キゥ……。
ああ、ヒトになでてもらうなんて、いつぶりかなぁ。
ちょっとだけ、ご主人の手を思い出すよ。

私のご主人は、ここフッブート王国の、
誉れ高い騎士だったんだ。
それはそれは立派で、かっこいいお方さ！
……最後は罪喰いにやられてしまったけれど、
でも、私は今でも、あのヒトを尊敬している。
この地から、いつまでも離れられないくらいにね。

フフ……ヒトになでてもらうのは、やっぱり心地いいなぁ。
ご主人は大抵ゴツゴツとした籠手をはめていたんだけれど、
それでも私は、なでられるのが大好きだったんだ。

旅人さん、ちょうどいい！
頼みたいことがあったんだ。
付近の「卵の欠片」を探してきて欲しいと思ってね。
いやいや……あなたは随分、過酷な戦いに巻き込まれたりだとか、
たくさん厄介な頼まれごとを引き受けているみたいだから。
たまには、こんな散歩気分のものも、いいだろう？

はは、昔あなたと似た旅人にも、同じように頼んでみたら、
「ようは、老いて体を動かすのも億劫だから手伝えってことだろう」
……なんて、ずいぶん直球に返されてしまったけどね。
足腰が鈍くて、力を借りたいのは本当さ。
「ダメルン巡礼教会跡」にある、
アマロの「卵の欠片」を探してきてもらえるかい？

「卵の欠片」、見つけてきてくれたかい？

立派なものを持ってきてくれたね、ありがとう！
ン・モゥ族から伝え聞いたところによれば、
卵の欠片には、骨を強める効能があるらしくてね。
年老いて足腰が弱ってきたから、こいつを食べて、
もう一度ひとりで遠出できるようになろうと思ってさ。

ところで同じ辺りで、ひときわ大きな卵を見かけただろう？
あれは、アマロのものと似ているが、別種のものらしい。
実のところ、その正体は謎でね。
我々、古の血が表に出たトゥパク・アマロが、
この地にやって来た時には、すでに存在していたらしい。
いったい何が生まれ、どこに行ったというのか……。

だが、卵を孵すには、この土地のように地脈や風脈が交差した、
エーテルの濃い場所が適しているからね。
そのため、あの卵の親も、かつてここで産卵と孵化を行ったのだろう。
私らがここで暮らし続けているのも、それが理由なのさ。
おっと……年寄りは話が長くなりがちで困るね。
さぁ、礼を受け取ってくれよ。

こんな世界にも……まだ、希望は残されていたんだね。
これは、本格的に足腰を鍛えなおそうか……。
滅びを免れた世界を、己の脚で歩いてみたくなったよ。