えおろーぐ

資金は、必ずどうにかします。
ですから、どうかこの像の修復を再開してください……！

前にもそうおっしゃったから、随分待ちました。
でも、最近では私よりあとに依頼された石像の修復にも、
着手されているそうじゃないですか……！

あっ……申し訳ありません。
見られているとは、つゆも思わず……。
……私は、この聖バルロアイアン像を修復したいのです。
ですが、私の家……正確には、私のいとこの悪評が広まり、
思うように仕事を請けていただけなくて。
私のいとこは、イニアセル・ド・ヴェナン。
前教皇をお守りしていた、蒼天騎士のひとりです。
蒼天騎士団については、前教皇の崩御とともに、
行方不明になったとされていますが……
彼らがよからぬ計画に加担したことは、今や公然の秘密です。
この像の修復のために基金を立ち上げたのは、
もともと、イニアセルでしたから……。
みなさん、関わりたくないのでしょう。
……私にだって、いとこの真意はわかりません。
でも、像を直すことで人々に誇りを取り戻してほしいという、
彼の願いは本物だったと思うのです。
そう信じて跡をついだのですが、難しいですね……。
資金集めも、仕事の依頼までも難航して、
心が挫けてしまいそうです……。

ごめんなさい……イニアセル……。

あの……もしや、この子のお知り合いですか？
さっきから、じっとこちらを見ているのですが……。

イニアセルのこと……？
ええ、もしも会えたなら、私の中で揺らぎはじめた気持ちを、
ふたたび信じなおせる気がするわ。

よく、わからないのだけれど……。
もしかして、励ましてくれようとしているのかしら。
だったら、言うとおりにしてみましょう。
ひとけが少ない場所ならば、神聖裁判所前の広場はどう？
先に行っているわね。

イニアセルを思い出せ、か……。
見知らぬ子どもの遊びに乗ってしまうなんて、
私、疲れてるのかもしれませんけど……。

あっ、あの子が来たみたいですよ。
ずいぶんたくさん、人を連れているみたいですけど……。

…………嘘でしょう……あれは……！

イニアセル……！
あなた、無事だったの……！？

そんなこと……！
あなたが戻ってきたと知れば、伯父様も伯母様も、
涙を流して喜ばれるわ……！

……継いだなんて、胸を張って言えはしないわ。
今だって、もう無理かもしれないと、挫けかけていたのだから。
でも、これからは諦めたりしないと誓いましょう。
あなたが罪を犯したのだとしたら、
その分も、あなたの志で誰かを救えるように。
だから、どんな形でもいい……今は生きて。
そしていつか、美しく再建された像を……
その周りで喜ぶ人々の姿を、必ず見にきてください。

あなた方は、イニアセルの協力者だったのですね。
心から感謝いたします……。
どうか、彼を無事に逃がしてやってください。

本当にありがとう……。
彼のこと、よろしくお願いします。