えおろーぐ

ハッ……！
同盟軍と交戦をしたのは、我が配下の部隊になります。
ただひとり負傷しながらも逃げ帰ってきた兵によれば、
イーストエンド混交林にて、待ち伏せ攻撃を受けたようでして……。

ハッ……直ちに任を解き、左遷しておきます。
お言葉どおり、「蛮族」相手に敗北を喫するような腰抜けは、
皇太子殿下率いる第XII軍団には相応しくありませんからな！

で、殿下……！？

フン、そうもあからさまに虚勢を張られると、
いっそ憐れみさえ覚えるな。
これまで貴様らに勝手を許していたのは、
単に「小蝿は捨て置け」との命が下っていたからのこと。
しかし我らが代理総督殿は、海賊衆のことがお嫌いなようだ。
小舟一艘でも襲撃されれば、それが開戦の口火となること……
貴様らも、よくわかっていよう？

その喧嘩を買ってやるほど暇ではない。
……行くぞ、船を出せ。

何を呆けている！
整列ッ、今すぐにだ！

…………よし。
今日は、貴様らに重要な通達がある。
心して聞くように。

先日、イサリ村にて、海賊衆による総督襲撃事件が発生した。
これは実にゆゆしき事態であり、
ドマに駐屯する帝国軍をあげて、制裁を下さねばならない。
同じく皇帝陛下に忠誠を誓った貴様らも、
当然、この戦に協力する義務がある。

フン、そう怯えるな。
貴様らごときを、前線に送ろうとは思っておらん。
これから指名する者は、我々に同行し、
兵器の手入れに協力するように。
なに、終わればすぐに解放してやる。

最後は、お前だな。
……ひとまずは、これくらいで十分だろう。

では、本日の用件はこれまでだ。
くれぐれも、海賊衆のような愚かな企てはせんことだな。
連中は、今に血祭にあげられよう。

そうか……。
では、こいつらには私から伝えよう。

これより、貴様らを、対岸のメインタワーに転送する。
そこで、兵器の修繕、手入れに従事せよ。
すべて万全の状態にすれば、村に帰してやるぞ。

そもそも、あれらの兵器を壊したのは誰だ？
反乱だなんだと企ててきた、貴様らドマ人だろうが！
わかったら、粛々と働くことだな。
兵器が直らなければ、海賊衆ら野蛮な反乱分子から、
貴様らの故郷を守ってやれないかもしれんぞ？

こいつらも、奥に連れていけ。
私は、ほかに大事な任務があるゆえ、城に戻る。

ではゼノス殿下、こちらへ……。
最寄の村までご案内いたします。

ハッ……！
ご、ご足労いただき、申し訳ございませんッ！

て、敵襲だと……！？

なんと、ドマが落とされるとは……。
やはり、現地人に代理総督の荷は重すぎましたか……。

えっ…………ハ、ハイッ！

なぜ、軍旗が！？
まさか拠点が陥落したというのか！

ひ、ひとまず戦域を離脱せよ！
退却、退却だー！

あまりあしざまに言うのは、酷というものですよ。
言葉巧みにゼノス殿下に取り入って、地位だけは得ましたが、
所詮は無能なアラミゴ人なのですから……。

おやおや、どうりで出世が早いわけです。
とはいえ、今回の失敗で終わりでしょう……。
分不相応の出世など望まなければ、生き残れたでしょうに。

栄えあるガレマール帝国軍は、
属州民同士の喧嘩になど、付き合っているヒマはない。

蛮族同士の小競り合いなど、好きにさせておけ。
ガス抜きには丁度いい……。

聞いたか、ドマに続き、アラミゴも陥落したそうだ。
あの戦の天才、ゼノス殿下が斃れようとは、誰が予想し得ただろう？

なんとっ！
やはり誤報であったか！

流言を用いるとは、忌々しい蛮族どもめ……。
やれるものなら、ゼノス殿下のご遺体を示してみせればいいのだ。
そんなこと、できようはずもないがな……！