えおろーぐ

アサヒよ、貴様はドマ出身だったな。

うむ。
貴様を皇帝陛下の代理人たる全権大使に任命する。
ドマへ赴き、和平交渉を取りまとめよ。

そうだ。
ただし、その傍らで当地にて代理総督ヨツユを見つけ出せ。

これより貴様には、神降ろしの秘儀を授ける。
ヨツユを見つけたならば、その手法を手ほどきせよ。
奴には、信仰心など露ほどもなかろうが、
八百万の神が息づく東方の生まれならば、依り代にはなる。
紅甲羅の神器と成すべき願いがあらば、神のひとつも降ろせよう。

むろん才なき女は、自ら身に宿した蛮神の虜となり、
願いに囚われた生ける亡者と、なりはてるだろうがな。

ふむ……嘆かわしいことに、
この帝都にも、民衆派なる軟弱者たちが蔓延りつつあるという。
奴らに今一度、蛮神の脅威を認識させねばならん。

貴様が我が手となり、警鐘を鳴らすのだ。
世界を真の意味で救済するために……やってくれるな？

もちろん、覚えているとも……。
件の蛮神は、ほどなく彼の英雄によって処理された。
召喚者は死に、再召喚の可能性もない。
すべては計画の内……
事態は完全に掌握できている、問題はない。

案ずるな……。
私の望みは星の救済なのだから……。

策が功を奏し、民衆派は息を潜めるばかり……
ならば今こそ、帝国の力を見せつけてやるときではないか？

皇帝陛下が一声、号令をかけるだけでいい。
それだけで軍は、飢えた狼のようにアラミゴへと殺到し、
あのような小国など、またたく間に喰らい尽くすことだろう。

……だんまりか。

わざわざ手間を掛けてまで「調停者」たる私が、
道化を演じているのだぞ？

お前に初めて、この顔を晒したときに誓ったろう？
私が持つ力と知恵のすべてを、帝国のために振るおうと……。
その言葉に偽りなしと、証明してきたはずだ。
あの神殺しの英雄すら、
この身体を得た私ならば、安々と始末できるだろう。
いったい、何を迷う？

あまり決断を遅らせると、確定した勝利さえ揺るぎかねないぞ？
悩みの渦を抜け出せたなら、また呼びたまえよ。
父上殿……。

久しいな、光の使徒よ……。

もはや、語り合うこともなし……か。

よかろう、光と闇の均衡を正すため……消えてもらうぞ！

ふむ、さすがは、ハイデリンが入れ込んできた、
英雄というわけか……。
だが、この肉体と我が魂の前では、
わずかに力が足りなかったようだな……。

ほう……何者かの意思を感じるぞ……。
しかし……間の悪いことだな……

……なぜ戦場から去った？

想定外の介入があっただけのこと……
次の機会があれば、逃しはしない。

ところで……君の祖父がどこにも見当たらぬが？

なるほど……。
彼は、あれでいて職務に忠実な男だ。
動いたということは、この状況に利用価値を見出したのだろう。