えおろーぐ

げっ！　見つかっちまったぜ！

にっ、人形が叫んだ！？

げっ！　爆弾！？

おいっ！　何やってんだよ！
早くそいつを投げ捨てろっ……！！

ええい、こうなったら……
それっ！！

まさか、このオイラが追いつめられるとはな。
さすがに、今回の獲物はデカすぎたか……。
だが、お宝じゃなかったなら用はねえ。
じゃあな、アバヨ～！

お前は、あの時の生き人形……
だが、ソボロ助広はオイラが頂戴したぜ！？
じゃあな、アバヨ～！

あいにくだが、どれだけ追ってこようが、
コイツがいる限り、オイラは絶対に捕まえられないぜ！

来い、モンタロー！

な、なんだってぇ！？

フン……オイラなんかより、
捕まえるべき奴がいるってのによ……。

……いったい、オイラに何を聞きたいっていうんだい？

ふ～ん、なるほどねぇ……
まぁ、真っ先に思いつくのは金銭目的かな。
目玉が飛び出るほど、高値がつく名刀だからさ。
けど、あれだけ名の知れた刀となると、
盗品だってすぐバレるから、売りさばくのも楽じゃない。
でも、オイラが繋がりのある裏社会の連中なら、
盗品専門の闇市にも詳しいから……
この縄を解いてくれるなら、話をつけてやってもいいぜ？

……それなら、この話はオシマイ。
てめぇたちで、なんとかするこったな。

へへっ、そうこなくっちゃな！

この水路に入ったことはあるかい？
この先のどん詰まりが、裏社会の連中のたまり場になってるんだ。
あいつらなら、何か情報を持ってるかもしれない。
さぁ、行くとしようぜ。

よっ！
元気でやってるか？

へへっ、ちょっといろいろあって、出してもらったのさ！
ところで聞きたいことがあるんだけど、いいか？

ちょっとした取引をしてな、協力してやってるんだよ。

まぁまぁ、落ち着いてくれよい。
話を聞けたら、すぐに去っていくから、
しばらくの間だけ、我慢してくれや。

ここにいるのはみんな、仕事にあぶれた奴らでな。
中には、あんたみたいに赤誠組への入隊を希望しながら、
入れなかったやつもいるんだ。
法の狭間にあるような、危険な仕事を引き受けて、
肩身の狭い思いをしながら、どうにか日々やりくりしてる。
他に、生きるすべがないからな……。
……そういうことだから、居心地が悪いかも知れないが、
少しの間、我慢してくれ。

すまん、すまん！
で、用件なんだが……
ヨウジンボウってやつを追ってるんだが、何か知らないか？

そいつがソボロ助広を盗んで、姿を消しちまってな。
目下、追っているところなんだよ。

なるほど、調べてみる価値はあるか……。
じゃあ、さっそく……

あいつらも、悪気があって、
ああいう態度をとってるわけじゃないんだ。
わかってやってくれ。

紅玉台場までなら、渡し船がある。
向こうでシグレと落ち合おうぜ。

アメノムラクモ、売ったらどれだけの額になるんだろうな？
……べ、別に、変なことを考えてるわけじゃないからな！

ど、どうしたってんだ！？
一瞬、誰だかわからなかったぜ……。

おしゃれ……ねぇ。
まぁセンスは人それぞれだろうけど、
オイラは、その服装に草履は似合わないと思うけどな……。

まぁいい、物見遊山で来たんじゃない。
そいつの着物より、アメノムラクモがあるという、
ゼッキ島へ渡る方法を考えようぜ！

なるほど。
海中からか、空からか、方法はふたつにひとつか……。

モンタローは、以前の一件が相当堪えたのか、
事件屋には、決して近寄ろうとしないのさ。
あいつを頼ることは叶わないぜ。

あれは…………あれは、元々あの野郎の物じゃなかったんだ。
ソボロ助広は、アケボノがあこぎな手段を使って、
とある侍から取り上げたんだよ。

元の持ち主は、貧しいながらも、正義を信じる侍だった。
その男は、ドマの戦火からクガネへと逃げてきた、
幼い人狼を育てていてな。
質素ながら、日々楽しく過ごしていたが、
ある日、愛刀を売って欲しいと商人が訪ねてきたんだ。
だが、侍は断った……魂たる刀は売れないとな。
侍の決意が固いと見ると、商人は攻め方を変えた。
他人を助ける心の優しさに付け込んで、侍を罠にハメて、
多額の借金を背負い込ませ、質草として刀を奪ったのさ！
己の魂たる「ソボロ助広」を取り戻すため、
侍は、休みなく働き続け……そして、死んじまった。
こうして、幼い人狼は天涯孤独の身に逆戻り……。

数年後、ヤンサから一匹のオオカミが戻ってきた。
修行で身につけた忍術を使い、
尊敬する義父のように、貧しき人を助けるために。
一匹オオカミは義賊なんかじゃない、こそドロだ。
奪われたソボロ助広を取り戻し、義父の形見として、
肌身離さず持ち歩くことこそ、真の目的なんだからな……。

……さっきの話は忘れてくれ。
今は、ヨウジンボウを見つけ出すことだけを考えよう。

へへっ、あいつなら、小判があればイチコロさ！

まぁ、見てなって！

へへっ……ソボロ助広、またまた頂戴したぜ！

げげっ！

その切腹、待ったッ！

オイラがソボロ助広を返して、牢に戻れば、
そいつが切腹する必要はない。
……そうだろ？

あんたはオイラを信じて、牢から出してくれた……。
その想いを踏みにじって、
裏切るわけには行かないからなぁ。

へへっ、シャバで出会うだなんて、さすがに想像してなかったろ？
オイラが、勝算も無しに自分からみすみす捕まると思ったかい？
自ら牢に入ったのは、脱獄できる算段があったからさ。
それに、自ら脱獄したとなりゃ、
あんたにも迷惑はかからずに済むだろ？

決まってるだろう？
クガネで、いけしゃあしゃあと過ごしている悪党から、
ソボロ助広を取り戻すためさ……！

アケボノのヤツを探してるんだろ？
オイラが掴んだ情報によると、紅玉海のベッコウ島へ、
なにやら秘密の取引をしにいったそうだぜ。

ほら、ボサッとしてると遅れちゃうぞ？
オイラたちも遅れずに向かおうぜ、シグレさんよ！

オイラが掴んだ情報によると、
やつらは恐らく、このあたりに現れるはずだ。
物陰から様子を見るとしよう。

待て……少し様子を見てみよう。
何かおかしい……。

馬鹿、待て！
早まるな！！

……アンタに折り入って頼みがあるんだ。
こいつを、オイラの代わりに墓前に供えてくれないかい？

……さぁ、オイラを捕えて赤誠組の屯所に帰るんだ。
盗みを働いてきたことは事実だし、
オイラを見逃したら、あんたの立場も悪くなるだろ？

えっ！？
いや、けどそれじゃあ……

外れもんのオイラに、
優しくしてくれたのは、あの人以来だよ。
アンタたちからの、この恩、一生忘れないぜ……。