えおろーぐ

そこまでだ。
その者は我が同志……帝国の兵ではない。

なぜ、我らの潜入が気取られたのかと思ったが、
まさか、ほかに侵入者がいたとはな……。

その鎧と槍さばき……
先日、かの英雄を戦場から救い出した、
竜騎士エスティニアンと見受けるが？

ほう……。
それを知るとなると、やはり「暁」と通じているか。

ふむ、外の者を頼っているのは、
あの少年らが、いまだ目覚めていない証……。

かの英雄は、どうしている？

新兵器……「黒薔薇」のことであれば、
我らの同志が、今しがた破棄に成功したところだ。
ただし、ここも精製工場のひとつにすぎぬ。
此度はずいぶんと警戒して、
以前よりも多くの場所で、増産を進めているらしい。

度し難いことだ……。
あのような死の兵器でもたらす勝利に、
いったい、どれほどの価値がある……！

その効きようから「毒」と呼んでいるが、
あれの本質は、魔法に近い。
あらゆる生物が有する、生命エネルギー……エーテル。
「黒薔薇」は、その循環を強制的に停止させるのだ。
ごく少量でも吸い込めば、体の活動が停滞……
毒に侵されたかのように、穢れをため込み、死に至る。
都市に散布すれば、いっさいの破壊を経ることなく、
住人のすべてを抹殺できよう。

竜騎士エスティニアンよ……。
これもまた、あの少年が導いた縁として、
一度だけ問うとしよう。

我らは、ともに真実を追い求める身。
……しばし手を組まぬか？

……その件については、我も聞き及んでいる。
開戦前の会談場で、ヴァリス陛下がそうおっしゃったとな。
ゆえにこそ、すべての真相を知るために、
赴かねばならぬのだ……。

帝都「ガレマルド」、魔導城へ……！

今のところ、戦況に大きな変化はない。
何度か小規模な衝突を繰り返しているが、
同盟軍も帝国軍も、攻めあぐねているようだ。

だが、戦の長期化は、双方の望むところではなかろう。
この停滞は、嵐の前の静けさともなり得る。
帝国が、一気に片をつけようとしたならば……。

無論、進めている。
……加えて、気がかりな情報を掴んだ。

国境地帯ギムリトの戦場から、
帝国百人隊長がひとり、姿を消したのだ。

確かに、姿を消したままであればな。
だが、最近になって、
そやつがこの帝都で目撃されたとなれば、話は別だ。
敵前逃亡ならば、帝都に戻るような真似はすまい。
死んでいたならば……死体が戻ったということになろう。

現在、ゼノスを騙っていると思われる、
アシエン・エリディブス……。
同様に、いずれかのアシエンが百人隊長の体を得たか……。
あるいは、まだ我らの知らぬ駒が、
盤上に置かれているのやもしれぬ……。

この件についても、引き続き追わせている。
……我らも行くとしよう。

うぬらは、このまま西門まで進め。
状況を把握し次第、即時連絡せよ！

構わぬ……。
我とて、この異変に乗じて潜入を企てたのだ、
この者らに手向けられる言葉はない。

今のは……陛下……！？

ヴァリス陛下ッ！

うぬは……「何」だ……！

うぬが言葉……我が剣にて確かめてくれようッ！

ゼノス、貴様ぁぁぁぁッ！