えおろーぐ

ノルヴラント中から来た連中が集まってできた集落だから、
色んな文化が混ざって、どこにもない郷土料理が生まれたんだ。
あんたも味わってきなね！

さっき挨拶して回っていた、お客様たちじゃないかい。
あたしなんぞに、何かご用かね？

おやまあ、水やりをしてくれたなんて……！
すぐに気づかなくて悪かったねぇ。
それから、どうもありがとう。

つい最近まで、トッディアが……
手伝ってくれる子がいたんだけど、亡くなっちゃってねぇ……。
今は順番に手伝いをしてもらってるんだけど、
まさか、お客様にやってもらうとは思わなかったよ。

いいや、ここの水やりが終わったなら大丈夫さ。
あたしたちの畑は、そう多くない。
必要以上に作りすぎないってのも、規範のひとつだからね。

ふふ、確かに……。
あんたみたいな、まだまだこれからって感じの子には、
不思議に思えるかもしれないねぇ。

……ねぇ、お嬢ちゃん。
「夜の民」がどうして生まれたか、知ってるかい？

ははっ、あんた勉強熱心なんだねぇ。
確かに、歴史として見たら、それで正解だよ。

ただね、実際は、そこに人の想いがあった。
その想いこそが、流れを、歴史を作ったんだ。

最初に「夜の民」となった人々の心には、
ずっとずっと、焼きついていたのさ。
目の前で無残に消えた、愛する人や故郷のことがね。
氾濫以前はいろいろな信仰があったけれど、そのどれもが、
光に呑まれたり、罪喰いとなって死んだ者の魂が、
どうなるかなんて示せなかった。
だから、人々は、今の時代なりの信仰を……
命の答えを、探そうとしたのさ。

命は終いに、闇へと辿りつく……。
ならば、この世を去った者は皆、天の暗き海へ運ばれよう。
今は光に覆われ、見ること叶わずとも、
彼らの魂はそこで、闇の中をたゆたい続けている。

だから、地上のあたしたちは祈るのさ。
運ばれた魂たちが、穏やかであらんことを……。
彼らを抱く闇が、別れを嘆く生者の上に、いつか戻らんことを。
その想いと、険しい密林を開拓するための知恵が混ざって、
あたしたちの規範は作られてきたんだよ。

そう言ってもらえると嬉しいねぇ！
優しいのか臆病なのか、わかったもんじゃないけどさ。

……ほら、この世界はとっくに壊れかけだから、
生きていく理由も勇気も、たやすく見失っちゃうだろう？
それでも……生きていたって証が、この命が、
最後にどこかへ届くのならば……
少しだけ強くなって、生きていける気がするんだ。
だからあたしたちは、どんなに楽な暮らしよりも、
この祈りを、誰かとともに続けて生きていきたいんだよ。

炊事の時間が近いんだけれど、少し手を借りられないかい？
今日の献立の風味付けに欠かせないものを、
すっかり切らしていることに気が付いてね。

ありがとう、助かるよ！
あたしが出向いて奮闘するより、
手練のあんたに頼むほうが、ずっと早いだろうからね。

ミントリーフ・スナップウィードの胴体に生えている、
「大きなミントリーフ」が2枚必要なんだけれど、
擬態が上手くて、なかなか見つけ出せなくてね。
北の朽ちた木のあたりで、この「甘ったるい蜜」を撒いておくれ。
同族に縄張りを荒らされたと勘違いして、
茂みから飛び出してくるはずさ。

まず、北の朽ちた木のあたりで「甘ったるい蜜」を撒くんだよ。
そうして現れた魔物を倒して、「大きなミントリーフ」を2枚、
集めてきてほしいのさ、頼んだよ。

やぁ、手間をかけたねぇ。
「大きなミントリーフ」は手に入れられたかい？

おやまあ、立派な大きさだね！
ありがとう、早速使わせてもらうよ。

これは、スリザーバウで造られる発酵食品、
プラホックの調理に欠かせない品なのさ。
すりつぶした魚を発酵させたものでね、
それを肉なんかと混ぜて、この葉に包み込んで焼き上げるんだ。
素朴な味ながら、これが美味しいんだよ！

プラホックは保存食だから、食べる機会が多い分、
みんなが飽きないように、いろいろ工夫したくてねぇ。

取りに行ってもらえて助かったよ。
機会があれば、あんたもスリザーバウの味を試してみておくれ。

昼夜の巡りが戻ってから、
心なしか畑の野菜たちの生育ぶりが良いんだ。
……それが愛しくてねぇ。

星空の下で、集落のみんなと囲む夕飯は最高さ。
「夜の民」流の、食前の祈りも忘れずにねぇ。