ナマイ村の青年
何してるんだよ!?
ナマイ村の青年
……あーもう、とにかくこっちに! 早く!
ナマイ村の青年
まったく、侍大将と異国人たちの一行なんて、
帝国兵に見つかったらどうするつもりだったんだよ……!
しがない百姓の息子だから、あんたと面識はない。
けど、あんたが誰かなんて、俺じゃなくたって知ってるさ!
先代のカイエン様のころから仕える、侍大将ゴウセツ……
帝国兵に「見つけ次第、即報告せよ」っていわれている、
第一級のおたずねものだッ!
彼らのおかげで、うちの村は、ひどい粛清にあったんだよ……!
人以下の扱いに耐えて、やっと生きることを許されて、
最近になって少しずつ平穏が戻ってきたんだ。
まだ反乱なんて考えてるなら、バカなことはよしてくれ。
俺たちは、静かに暮らしたいんだ……ッ!
????
そこにいるのかー?
うちの妹と、何してるんだよ……!
ほら、早くしろ……ッ!
けど、村には関わらないでくれって、言っただろ……!
あんたたちのこと、タレ込んだりはしない。
だから、何もせずに立ち去ってくれよ。
それで、もう二度と……来ないでくれ……!
そうだよ……それ以外、何があるっていうんだよッ!
見つかったら、俺たちは、また……ッ!
►両親を亡くした
ッ……ここまで来たなら、聞くまでもないだろ……!
アザミだって、ちゃんとわかってて花を供えてるんだ……!
俺と妹に、本当のドマを見せてやるって言って出ていって、
戻ってきたのは、青白い遺体だけだった。
遺体をもってきた帝国兵は言った。
この重罪人どもの親類や友人は前に出ろ……
しらをきれば、村ごと焼き尽くすぞって。
両親のことを、間違いを犯した大馬鹿でしたって、
何度も……何度も……復唱させられて…………。
せせら笑うあいつらの顔を、見上げることもできなかった。
抵抗したら、次は妹が何をされるかわからない……。
怖かった……ただ、怖かった…………。
父さんと母さんに、まともな墓すら作ってやれない……!
俺たちはもう、あんたたちの求めてる、気高いドマ人じゃない。
死ぬほど惨めで恥ずかしい何かに、成り下がったんだ……!
浅ましくても服従して、俺たちは生きるよ……。
それでいい……それでいいんだから、放っておいてくれ……!
何を犠牲にしても主君に従うよう、仕込まれてる。
それで、前だけ向いてられるんだ……!
普通は怖いし、迷うんだよ……。
今に納得してなくたって、毎日は変えられなくて、
どうしたら最悪にならないかだけ考えてる……!
惨めでも、これが精一杯なんだ!
だから、あんたたちを見てると、すごく痛いんだよ……。
こういうの、もうやめてくれよ……!
山菜を採りに来ただけなんだから、堂々としてればいいだろ。
なんで隠れちゃったんだよ、俺……!
けど……暗殺、って言ってたよな。
あの皇太子ゼノスを……本気で……?
そんなの無茶だ、大馬鹿だっ!
失敗したら今度こそ…………。
帝国の犬めッ!
今度こそ……逃げるもんかッ!!
あんたたちのやってること、大馬鹿だと思った。
よけいなお世話だって思ったよ……!
……だけどッ!
言えなかったけど、守りたかった何かがあった……!
あんたたちを見て胸が痛むのは、
その心が、まだ俺たちにあるからだ……!
今忘れたふりをしたら、きっと二度と向き合えない!
もう曲げられるもんか、俺たちは最期までドマ人だ!!
水、しみたよな……。
俺たち、ついに帝国に喧嘩を売っちまった……!
こうなったら、連中をドマから追い出すまで止まれない。
みんなで話し合って、それを承知で武器を取ったんだ。
だから……これからは、一緒に戦わせてくれ!
……って、まずは手当てだよな、うん。
俺、先に村に戻って、あんたたちを受け入れる準備しとく。
傷に障らないよう来るんだぞ、ゆっくりだからなっ!
村のみんなには話をしてある。
適当に腰掛けて、ゆっくり休んでくれ。
…………あのさ。
いろいろ言ったのに、俺たちのこと、諦めないでくれたよな。
ありがとう……。
俺の中で死にかけてたドマを、見つけてくれて。
ユウギリって忍びにも、あとで礼を……言えるかな。
あんたたちこそ、話すことがあるんじゃないのか。
俺はちょっと、村のみんなと話してくる。
旅立つんなら、弁当、持ってけよ。
うちの村に残ってる奴は、ろくすっぽ戦えないけど、
俺たちが作った米はうまいんだ。
都合がよすぎるって怒られるかもしれないけどさ。
若様が戻ってきて、戦に勝って、
父さんと母さんが見せてくれるって言った、
本当のドマになる日が来るのを……待ってる!
自分の生まれ持ったもの……ドマの出身だってことを、
誰の前でも誇れるようになったら、きっと嬉しいと思う。
だから、俺たちも、もう少し気張ってみるよ。
あんたたちには世話をかけるけど……どうか、よろしく頼む。
心強い、それじゃあさっそく…………
手が空いたなら、リョウセンさんとこに、
手伝いにいってもらえるか?
好きに家に上がっていいから、使えそうなもんがあったら、
適当に持って行ってくれ。
できたなら、早く届けにいってこい! 今すぐっ!
みんな、若様が戻ってきたから、一層張り切ってるんだ。
だけど、防具がどうにもな……。
鎧兜とまではいかなくても、何か防具をつけなきゃ、
出たそばから倒されていくだけだ。
腕はいいから、頼んでみることもできると思う。
けど……俺じゃ、あの人をうまく説得できる自信がない。
案内するから、あんたたちもついてきてもらえないか?
その人の名前は「ツラヌキ」さん、
今は南のクサカリの里に住んでるんだ、行こう。
まだ先はある、そのために俺たちは戦うって決めたんだ。
それに、カイエン様の遺したものも、まだ消えちゃいない。
若様を、こいつらが連れ帰ってくれたんだ。
こうなりゃ全員巻き込んで、絶ッ対、勝ってやる!
こうなりゃ全員巻き込んで、絶ッ対、勝ってやる!
父さん……母さん…………!
お礼を言いたかったのに、
リセたちも、いつのまにか消えちゃってるしさ!
だから……その……今更になったけど、ありがとうな。
あんたたちの戦いはまだ続くっていうから、
今はそれだけ、伝えておくよ。
あんたたちが西に帰っちゃったとおもったら、
今度はヒエン様が出兵するとか言い出して……何が何やら!
結局、みんな無事に戻ってきたからよかったけどさ……。
あんたも平気そうで安心したよ。
英雄とかいったって無理は禁物、飯と休憩はとれよな!
????
妹に手出しをするなっ!
それに、あんたたちは……!
急にあいつらが現れて、襲ってきたんだ。
俺にも、何がなんだか……。
よかったら、ナマイ村まで寄ってくれ。
あんたたちなら、いつでも歓迎だから……それじゃ。
それにしても、帝国の人間に助けられる日がくるなんてな……。
ありがとうな……感謝しているよ。
それにしても、まさか、
帝国人に助けられる日がくるなんて……。
最初に軍服姿で登場されたときは、敵の援軍かと思ったよ。
い、生きていたのか……!
……あいつはいったい何なんですか!?
ドマ城の戦いで、死んだはずなんじゃ……!
忘れたっていうんですか、全部!?
お前が納得するなら、俺はそれでいい……。
もうお前が怖い思いをしないのなら、
俺はそれだけでいいんだ……。
アザミに止められたら、俺は何もできないよ……。
アザミに止められたら、俺は何もできないよ……。
アザミが笑顔でいてくれたら、俺はそれだけでいいんだ。